東洋医学の「解剖学」と「生理学」①生理物質

東洋医学では、独特の概念人体の構造生理機能が説明がなされます。

東洋医学の観点からの人体の構造と生理機能は、現代医学の解剖学や生理学とは大きく異なるため、非科学的に思われる部分もあるかもしれません。

しかし、その非科学的部分も含めて、一体となって成立しているのが東洋医学です。あくまで、「東洋医学上の概念」として理解していく必要があります。

東洋医学の解剖学と生理学では、「生理物質」「臓腑」「経絡・経穴」をお話します。

まずは「生理物質」から。

生理物質

生理物質とは、生命活動に関わる基礎的な物質であり、臓腑や経絡の働きと深く関与しています。

生理物質には、「精」「気」「血」「津液」の4種類があります。

これらの生理物質は主に、生れつき有するモノ、飲食物の摂取によって得られるモノの2種類が存在します。また、生理物質は体内での変化・生成することで、別の生理物質になるモノもあります。

は、生命活動を維持する為に必要な、最も基本的な物質です。組織・器官の活動のエネルギー源となり、気を生成します。

精の分類

1)先天の精
先天の精は、父と母から受け継いだ産まれた時から有する精です。「腎」に貯えられて、身体の成長・発育の源になります。

2)後天の精
後天の精は、飲食物を摂取する事によって、「脾胃」の働きから作られる精です。飲食物は水穀とも呼び、水穀から作られる精の為、「水穀の精」とも言います。作られた後天の精は、大部分は気になり、全身の組織・器官に行きます。残りの一部は腎で貯蔵されます。

精の作用

1)生殖作用
腎に貯えられたは、生殖活動に用いられます。男女の精の合体にによって妊娠は成立し、合体した精は胎児の「先天の精」となります。

2)滋養作用
滋養とは、生命活動に必要な成分、身体の栄養になるモノです。は身体にとっての栄養となります。腎に貯蔵された精は各臓腑に分配されて、臓腑が働く為のエネルギー源となります。

3)気の生成
気を生成することができます。腎に貯蔵された精は「原気」に成り、生命活動の原動力になります。また、臓腑に分配された精も、「臓腑の気」となって、臓腑の原動力となります。

は、生命活動の原動力となる生理物質です。気には、心身の成長と発達を促進し、組織・器官が活動する為のエネルギーとなる作用があります。気は身体中のあらゆる場所に分布しており、気の所在や部位で、気の名称や特徴的な作用は異なります。

気の由来

は主に精から生成されます。
精と気の関係は、例えるならば、精は燃料であり、気は燃料から作られるエネルギーと言えます。

1)先天の気
腎に貯蔵された「先天の精」からは「先天の気」が生成されます。先天の気は主に「原気」と呼ばれます。

2)後天の気
「後天の精」からは「後天の気」が生成されます。「水穀の気」とも呼ばれます。後天の気は主に「宗気」「営気」「衛気」の3種類があります。

気の分類

1)原気
原気は、先天の精から生成される先天の気です。
臍下丹田に集まり、生命活動の原動力として、心身の成長と発達臓腑が働く為に必要なエネルギーとなります。

2)宗気
後天の気のひとつです。
宗気は、「肺」で後天の精と天の気(空気)が合わさることで生成されます。宗気は胸中(膻中)に集まり、心肺の活動を支える。宗気の存在により、安定した心拍・呼吸・発声が行われます。

3)営気
後天の気のひとつです。
営気は、後天の精から得られる陰性の気(水穀の精気)から生成されます。営は栄養の栄を意味し、営気自体が、身体の栄養物の一つです。

営気は津液と合わさることで「血」を生成します。そして、営気は血と共に脈中(血管内)に入り、身体中を巡って、組織・器官に栄養を供給します。

4)衛気
後天の気のひとつです。
衛気は、後天の精から得られる陽性の気(水穀の悍気)から生成されます。衛気も営気と同様に栄養物の一つであり、活動的な気です。

衛気は脈外(血管外)を流れて、皮膚・筋肉から組織・器官に至るまで、身体中を循環しています。

衛気の作用は、筋肉を温め、肌に栄養を与え、汗腺の開閉を管理して体温を調節します。これらの作用で衛気は外から来る外邪(病気など)から身体を防衛しています。

5)臓腑の気
先天の気や後天の気から臓腑に分配された気を臓腑の気といいます。
配当された臓腑の気は、臓腑ごとに肝気・心気・脾気・肺気・腎気と呼ばれます。臓腑の気は、臓腑の活動する為のエネルギーとなり、それぞれの臓腑の生理機能を発揮させます。

は血液のこと。
血は、営気と津液が合わさることで生成されます。

血は脈中を流れ、全身を循環して、組織・器官に栄養を与えます。血は、臓腑の「心」により循環し、「肝」に貯蔵され、「脾」によって血の動きは管理されます。

津液

津液は体内の正常な水分の総称です。
津液は、身体中を巡り、組織・器官を潤おし、営気と合わさることで血を生成します。

津液は、「脾胃」の働きによって飲食物(水穀)から分離されることで生成されます。生成された津液は「脾」の働きで「肺」に送られ、「肺」の働きによって全身に散布されます。散布された津液のうち、不要なものは「腎」によって、「膀胱」に貯められて、尿として排出する。

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