東洋医学の理論

現代医学が自然科学(物理・化学・生物学など)を基礎理論としているように、東洋医学にも基礎となる理論が存在します。

東洋医学では、陰陽学説五行学説が、東洋医学の基礎理論にあたります。

陰陽学説と五行学説は、古代中国で生まれた理論でもあり、思想でもあります。

これら陰陽学説と五行学説を合わせて、陰陽五行説とも言い、
陰陽五行説は、東洋医学での人体の生理や診断、治療にまで幅広く適用されています。

また、陰陽学説・五行学説の前提となっているのが「気の思想」です。

「気」というのは、その有無や形状、作用には諸説賛否はありますが、
東洋医学は「気」の存在を「有」としている「気の医学」です。

気の思想

「気」とは、一般的には目では見ることのできない、流動的で何らかの作用を起こす物質とされています。また人体においては、生命活動の維持に欠かせない存在ともされてます。
現代医学では「気」は、存在しない概念であり、東洋思想の独特の存在です。

東洋医学では、「気」は生理物質の一つであり、身体中を満たして、全身の組織や器官を巡っています。
また「気」様々な作用・働きがあり、活動する部位や作用で気の名称は異なります。

陰陽学説(いんようがくせつ)

陰陽学説とは、
この世の全ての事柄は、陰(イン)陽(ヨウ)の対称的なカテゴリーに分類できる、という思想です。

陰陽の分類は、物事だけでなく、季節・時間・人体など全ての事柄を分類することができます。
また、陰と陽の関係にはいくつかの法則が成り立っています。

東洋医学では、体内で重要な働きをする五臓(肝・心・脾・肺・腎)にある陰と陽の気を調節することで身体を治します。

陰と陽は、大雑把には以下のように分類されます。

陰は、静的・暗い・冷たいモノ
陽は、動的・明るい・温かいモノ

これらの陰と陽の分類は、絶対的なモノではなく、相対的なモノです。

以下に具体例を示します。

陽:上 左 外 浮 表 昼 夏 南 男 幼 背 熱 乾
陰:下 右 内 沈 裏 夜 冬 北 女 老 腹 寒 湿

陰陽の法則

陰と陽の関係にはいくつかの法則があります

(1) 陰陽互根(いんようごこん)
陰と陽は、対称的な要素ですが、どちらか一方だけでは成立しない、という法則。

例えば、上と下という概念は、上や下だけでは存在する事はできません。
上があるから下があり、下があるから上がある、といえます。。

このように陰と陽も、対称的でありながらも、根本部分に同一性があることを陰陽互根と呼びます。

(2) 陰陽制約(いんようせいやく)
陰と陽は、互いを制約し合う、という法則です。

陰は陽を、陽は陰を相互に制約しあって、平衡(バランス)をとろうとします。
このような陰と陽の働きを、陰陽制約と呼びます。

(3) 陰陽消長
陰陽の量は増えたり減ったりする、という法則です。
陰陽の量的な変化、とも言われます。

例えば、1日は、夜の零時から陰が減り、日の出とともに陽が増えて昼の12時になります。
昼を過ぎると陽が減り、日没とともに陰が増えて夜の0時となります。

このような陰陽の量の変化を、陰陽消長と呼びます。

(4) 陰陽転化
陰または陽が極まったときに、陰は陽に、陽は陰に変化する、という法則のこと。
陰陽の質的な変化、とも言われます。

例えば、ボールを上に投げた時、ボールは上昇して頂点に達した後、ボールは下降します。

このような陽から陰へ、陰から陽へ変化を、陰陽転化と呼びます

(5) 陰陽可分
全ての事柄は陰と陽に分ける事ができ、さらに細かく陰陽に分ける事ができる、という法則です。

例えば、男・女は陽と陰に分けられますが、男でも上半身・下半身は陽と陰に分けられ、
さらに上半身でも背・腹は陽と陰に分けられ・・・(以下略)。

というように陰も陽も、さらに細かく見ると陰と陽に分けられる、ということ陰陽可分と呼びます。

五行学説(ごぎょうがくせつ)

五行学説とは、
この世の全てのモノは、「木・火・土・金・水(モク・カ・ド・ゴン・スイ)」の5種類の元素から成る、という思想です。

五行学説では、5つの元素は相互に関係しあい、循環的に産生し、抑制し合う、という理論があります。

東洋医学では、5種類の元素に「肝・心・脾・肺・腎」の五臓を当てはめて、五行学説を運用します。

五行学説の循環的な産生(相性)と抑制(相克)が行われた五臓のバランスがとれた状態を、身体の正常な状態としています。

また、身体の異常な状態とは、五臓のバランスが崩れた状態であり、五臓のいづれかの臓の働きが、強すぎる場合や弱すぎる場合に引き起こされます。
その他にも、五行学説は様々な事柄を5種類の元素に当てはめることで、人体の生理や病理の理解、さらには診断や治療にまで適用されます。

元素以外の事柄を当てはめたものは、五行式体表と呼びます。

五行学説の理論

5種類の元素には、一定の法則をもった関係性が存在します。

(1) 相生(そうせい)
相生とは、ある元素が、別の元素の作用や働きを促す・強める、という関係です。

この相生関係には、一定の向きがあり、「木 ➡ 火 ➡ 土 ➡ 金 ➡ 水 ➡ 木」という形で循環します。
それぞれの元素の関係を、木生火、火生土、土生金、金生水、水生木と呼びます。

東洋医学でも、「肝 ➡ 心 ➡ 脾 ➡ 肺 ➡ 腎 ➡ 肝」の相生関係は存在します。

例えば、仮に体調不良の原因が「脾」が弱っている事にある場合、
「脾」を補うだけでなく、その上流の「心」も補う事で、
「脾」の働きを助ける治療をする、という場合もあります。

(2) 相克(そうこく)
相克とは、ある元素が、別の元素の作用や働きを制約する、という関係です。
ここでいう制約とは、その元素の働きや作用を弱めたり、抑える事を意味します。

この相克関係にも、一定の向きがあり、「木 ➡ 土 ➡ 水 ➡ 火 ➡ 金 ➡ 木」という形で制約します。
それぞれの元素の関係を、
木克土、土克水、水克火、火克金、金克木と呼びます。

東洋医学でも、「肝 ➡ 脾 ➡ 腎 ➡ 心 ➡ 肺 ➡ 肝」という相克関係は存在します。

例えば、仮に体調不良の原因が「脾」の働きが強すぎる事にある場合、
「肝」を補い、「脾」を克して治療する、という場合もあります。

(3) 相乗(そうじょう)
相乗とは、相克が過剰になっている、という異常な状態です。

相乗は、克する側が強すぎる場合、克される側が弱すぎる場合、の片方または両方の状態のときに生じます。

相克による制約が強よすぎると、克さている「臓」は上手く働けなくなります。

相乗関係の際、それぞれの元素の関係を、木乗土、土乗水、水乗火、火乗金、金乗木と呼びます。

例えば、仮に体調不良の原因が「肝」が強すぎる事による相乗(木乗土)の場合、 「肝」を瀉(シャ)して、克されている「脾」を補って治療する、という場合もあります。

(4) 相侮(そうぶ) 相侮とは、相克の関係が逆転している、異常な状態です。

相克関係の逆転は、本来の克する側が弱すぎる場合、克される側が強すぎる場合、の片方または両方の状態のときに生じます。 相克関係が逆転すると、克する側も克される側も「臓」としての上手く働くことができなくなります。

相侮関係の際、それぞれの元素の関係を、木侮金、金侮火、火侮水、水侮土、土侮木と呼びます。

例えば、仮に体調不良の原因が「肝」が弱すぎる事による相侮(土侮木)の場合、 「肝」を補い、克している「脾」を瀉して治療する、という場合もあります。

 

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